2015年6月12日金曜日

むゆうじゅの舞踊家 福島まゆみさん、桐山日登美さん ✦インタビュー✦


今月末から、「むゆうじゅ」の沖縄公演が始まります。
舞踊家2名、音楽家2名、それに演出家、美術家もいる、インド古典舞踊オディッシーを基にした、創作グループです。昨年に引き続き、今年で2回目のツアーです。

私は、昨年の公演でも伴奏として歌わせてもらい、その時なんとなく、

まゆみさんは太陽のよう、日登美さんは月のよう

と、私の目には映りました。

芸事を学ぶこと、創作すること、それらを表現すること。
「好きだから」だけでは、歩きつづけられない道。

そうだ、せっかく今年も一緒に演奏させてもらうのだから、おふたりに、いろいろとお話を聞かせてもらおうと思いました。

何気ないお喋りの中には、ステキなヒントがたくさん散りばめられていて、

お話のあと、

まゆみさんは月のよう、日登美さんは太陽のよう

と、私の心には映ったのでした。

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「むゆうじゅ」はいつ、どのように結成されたのですか?

福島まゆみ(以下、まゆみ)
2008年、私に先天性股関節脱臼が発症し、歩くこともままならなくなってしまいました。もう二度と踊れないだろうと絶望した私を励ましてくれたのが日登美さん。ステップしなくても踊れる踊り、座ってでも踊れる踊りを二人で一緒に考えようって言ってくれたんです。それから私たちは、踊りたいと思っていた「クルヤドゥナンダナ(今回の演目のひとつ)」のビデオを観たり、インド人の舞踊家が来日した際には積極的に教えてもらったりなんかして。日登美さんに支えられながら、どうにかして二人で踊り続ける、あの頃はそれだけしか考えていませんでした。

桐山日登美(以下、日登美)
そんな折、延命寺のご住職が、足を使うステップの代わりに、語りを入れたり歌ったりしながら踊ってみてはどうか。と、アドバイスをくれました。それから語りや歌を入れて作り始めてみたら、音楽家が必要だ、ということになって、それでGoくん(Go Arai/シタール、バイオリン奏者)を誘ったんです。それから「むゆうじゅ」として、福祉施設などのボランティア公演を中心とした活動が始まりました。


では、当初はリズム楽器なしで活動していたんですか?

まゆみ
(笑) 最初は、音楽の事も分からないし、ひっちゃかめっちゃかだったけど、Goくんがリズム、主旋律、飾りの音、一人何役もひたすらに伴奏してくれて(笑)でも、そんなんだったから、私たち一体何やりたいんだろう、何に向かっているんだろう、みたいな時もありましたよ(笑)

日登美
とにかく思いついたことをやってみる!みたいな感じでした(笑)


その後、どのタイミングで石田紫織さん(タブラ奏者)もメンバーになったんですか?

日登美
2011年の震災の直後、チャリティー公演をするにあたって、やはりパーカッション奏者がどうしても必要だと思って。それで、以前からむゆうじゅの活動に興味を持ってくれていた、紫織ちゃんを誘いました。


だんだんとメンバーを増やしていった「むゆうじゅ」には、更には演出家(垣花理恵子さん)も就きました。演出家がいることで、何が変わりましたか?

まゆみ
演出家がいるっていうのは、ぜんぜん違います。創作が「作品」になる。表現を客観的に観てくれる人がいるのは、すごく良いことだと思います。

日登美
あと、演出家が入る前は、私たち二人の意見が割れたり、鏡を見ながらあれこれ模索していたことも、今は、スッと演出家に決定を委ねることが出来ます。そして、私たちの思いも寄らないアイディアが飛び出してきたりして、そういうのが面白いですね。

まゆみ
こちらからやりたいと言った題材なのに、こんなに違った視点があるんだ、とか、逆に驚かされることもあります。


演出家と一緒につくる過程を教えて下さい。

まゆみ
まず、私とひとみさんで曲を決め、踊りの構想や詩の意味を演出家に提示します。すると、演出家は、そこから脚本を作り、踊りと詩の内容から、セリフを書いてくれます。そして、作品の目指すところを、客観的な視点からこちらに提示してくれたり。さらに、その作品を見据えた上で、セリフの言い方、表現の仕方を教えてくれます。


では、音楽家との関係についてお聞きします。生音で踊るのと、音源で踊るのはどう違うんですか?

まゆみ
ぜんぜん違います(笑) 例えばCDで踊る場合は、その曲がどんなに盛り上がっても、やっぱりひとりで盛り上がらなきゃいけない、みたいな感じなんですが、生演奏だと、現在進行形で一緒に創ってるから、ひとりじゃない。ひとりじゃないって大きいです。

日登美
しかも、GOくんや紫織ちゃんは、私たちの踊りをものすごくよく観て作ってくれてるんです。細かいタイミングまで。だから、私達が勝手に振りを変えると、怒られちゃうんです(笑)。ちゃんと言ってくれなきゃ困るって。それって、本当に一緒に作っているってことだって、ただ単に音楽をコピーしているんじゃないんだって、ちゃんと観てくれているんだって、強く感じました。

まゆみ
般若心経(今回の演目)は、本当に一から一緒に作りました。それに、リハーサルの時は、前の日から愉しみで仕方ないんです(笑)!


とても楽しそうですが、創作段階で大変なこともありますか?

日登美
やっぱり踊り手の私たちは意見が分かれることはあるけれど、その時は、演出家に意見を求めることが出来るから、行き詰まるようなことは無いですね。それは音楽家との間でも同じことで、何か困ったら、演出家という第三者の目に見てもらうことが出来るから、大変なことは以前よりもずっと少なくなりました。


では、逆に楽しいこと、面白いことはなんですか?

日登美
私たちの思いも寄らないアイディアが飛び出してきたりして、そういうのが面白いと思います。

まゆみ
舞台の作り方というのは、演劇の人、音楽の人、踊りの人、舞台での存在の仕方が少しずつ違うから、そういう違う考え方を取り入れていくっていうのは面白いです。例えば、演劇の人は、舞台の上ではその役になりきって、日常の自分ではなくなるでしょう?でも、ミュージシャンは、半分日常も残してるでしょう?演奏中は音楽に入り込んでいても、合間にトークしたり、水を飲んだり。でも、むゆうじゅの場合は、ミュージシャンであっても登場人物の内のひとりになりきる、という演出があったりします。


ところで、お二人はお互いをどのような踊り手だと思っていますか?

まゆみ
日登美さんは、誠実な人。踊りに対しても、日常生活でも。誠実で丁寧。そういう私にないところを、表現してくれていると思います。

日登美
「むゆうじゅ」の中で、まゆみさんはムードメーカー。それは私にないところだと思います。踊りは、まっすぐで繊細です。


演じる上で、役柄とか決まっているんですか?

まゆみ
役割は特に決まっていません。昨年踊った時は、私がクリシュナ(男)役で日登美さんがラーダ(女)役だったけど、それは実は新しい試みで、それまでは日登美さんがクリシュナを踊っていたんですよ。


私は去年、まゆみさんのクリシュナと日登美さんのラーダがすごくピッタリだと思ってたので、それはすごく意外ですね。

日登美
そうですね、初めて観た人はそう思うかもしれないけど、今まで何回か観ているお客さんには、「あれ、今回はまゆみさんがクリシュナなの?」みたいな感じだと思います。(笑)

まゆみ
(笑)だから、今回はどちらがクリシュナかな?なんて想像してもらっても面白いかもしれません。


確かに(笑)!そうやって、二人の個性の違いが見えるのも面白いですね。

まゆみ
リズムの取り方とかも、感覚が全然違います。自分の取り方だけで踊っていると単調になりがちなので、あ、日登美さんはこういうリズムの取り方をするんだ、と思って取り入れていくと変化が生まれたりします。

日登美
だから、二人が動きを合わせたとしても、合わないってことがあるんですね。でも、それが面白いと思っていて。まゆみさんの動きをよく見ると、あぁなるほどってその違いが見えてくる。そこを、また合わせにいく。細部にこだわって二人の動きをあわせていくと、だんだんひとつの生き物のようになってきて、最終的に踊りがぴったりあったところで、二人の色の違いがでてきます。

まゆみ
だから、個性を見せたかったら、全くバラバラの動きをするのではなくて、敢えて同じ動きをする方が違いが目立つと思います。グループによっては、同じメイク、同じ衣装、同じ目線、で個性はなるべく無くして、コールドバレエみたいに全部きっちり揃える。というところもあるけれど、私たちは敢えて違いを出したいと思っています。でも、その違いというのは、合わせようとしないんじゃなくて、合わせて、とことん相手に合わせにいって、それでも合わないもの。それが、純粋な個性だと思います。


では、「踊り」以前の「動き」について、大切にしていることはありますか?

まゆみ
私も日登美さんも、フェルデンクライス・メソッド(動きに伴う感覚に注意を向けることで、動きの質を改善することを目的とするメソッド)を取り入れています。それは、筋力に頼らなくても動ける動きを学ぶこと。つながりの中で動くことです。
人って、赤ちゃんの時はそうじゃなかったのに、立ち方だったり歩き方だったり、踊り方だったりに癖がついてくるでしょう?それをどんどん削ぎ落としていって、赤ちゃんみたいな、自然の理に適った動きを取り戻すこと。自然の理に適った動きというのは、力を使わないシンプルな動きなんだと思います。


それは、動かない、とは違うんですか?

まゆみ
動かないとは違います。脱力ではなくて、リラックスということです。例えば、腕を動かしたいのに腕の力を使わない、とか、脚を動かしたいけど脚の力は使わない、それってどうやったら出来るんだろう?ということを考えて、練習したりします。


フェルデンクライス・メソッドを取り入れて、何か変わりましたか?

まゆみ
私たちがインドで習ってきたのは、筋力をつけて、スクワットいっぱいして、脚に体に筋肉つけなさい、というものでした。でも、私が先天性股関節脱臼で踊れなくなって、筋肉も落ちてしまって、じゃぁどうしたら踊れるんだろうって考えて、探して、このメソッドに出会いました。それで知ったことは、体を痛めずに踊るには、力を使わなければいいんだってこと。痛くないってことは、体が喜ぶ動きだし、無理のないシンプルな動きですから。

日登美
つくる動きではなくて、出てくる動き。こうしようって頭で考えて出てくる動きではなくて、体から自然に湧き上がってくる動き。っていうと、やっぱり一番シンプルで緊張感のない動きじゃないかなって。

まゆみ
なんか人って、自分は緊張していない、と思いがちですよね。これは自然な動きです。って思っていても、実は緊張していたり、ただ癖の動きだったりするから、まずはそこにどうやって気づくか、ということ。だから、本当に体のいろんな部分に気を使います。隅々まで意識の光を当てるという感じです。
日登美さんと二人で練習している時も、脚をこっちに出して、その時目はこっちを向いているとか、脚を先に出すのか、目の動きが先なのか、とか。顔はこっちだけど、目はいつあっちに行くとか。体の動きをなるべく言葉にして、細かく細かくチェックしています。
なんとなく合わせるんじゃなくて、最初に目が動いて、その後で顔が向いて、胸、骨盤、脚、かかと、、、という感じで。

日登美
一見同じことをやっているようで、細かいところまでそうやって探っていくと、全然違う動きをやっていたってことに、後から気づく時があるんですよね。


なるほど。「むゆうじゅ」の演目たちは、ひとつひとつ神経を研ぎ澄ませて、細かく丁寧に創りあげられていくんですね。そして、出来上がっても、また違った角度から見て、今いいと思う方へ変えていく。そうして踊り続けていく。みんなで創作する面白さも改めて感じました。今年の公演も楽しみです。本当にありがとうございました。では、最後に、沖縄の皆さんにメッセージをお願いします!

まゆみ日登美
むゆうじゅは、これまで変わってきたように、これからも変わっていきます。その時、その時、皆さんと一緒の空間を共有できたらと思います。昨年の演目の中の一つ「ギータゴービンダ」の続編も今回上演するので、前回観てくださった方も面白いと思います。
また、これまでお声を頂いていた、むゆうじゅ初のCDが、6月22日(夏至・大安)に発売になります!こちらもどうぞ宜しくお願いします。
そして、何よりも、皆さんにお会い出来る事を楽しみにしています!


「むゆうじゅ Heart Sutra 2015」 公演詳細 はこちら✦

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